メルト・エイジ2

 幾度となく今世紀最大の事件を更新し続けて、今日に至る。

 東京は地上60階から地下40メートルまで、余すところなく忙しい。足の裏で、うごめく人の波を感じるのは難しい。コンクリートは厚い。触ると熱い。

 今世紀最大に暑い日だった。

 「虎ノ門って、漢字で書くといかついのに、ひらがなで書くとかわいい。」

 「とらのもん」

 銀座線は夏の方向に向かって走る。人々は、今夜あたらしく刻まれるであろう今世紀最大の事件について、期待していないふりをする。

「風邪ひいた。のど飴舐めていい?」

「馬鹿は風邪ひかないってあれ、馬鹿は風邪ひいても気づきもしないって意味らしいよ。」

  本当に、地下鉄はわたしたちを目的地まで運んでくれるの?窓の外はいつまでも真っ暗なのに、わたしたちはいったい何を信じているの?わたしたちが微かに期待している今世紀最大の事件がいつまでたっても訪れなくて、このまま夏が終わってしまったって、誰も責任をとってくれないんだよ。確かなのは、自分の足で歩くことだけれど、それでもやっぱり、歩き続けると疲れちゃうのが、嫌になる。

「好きな人の前で、龍角散なんか舐めないから。」

「知ってるよ。」

  花火が上がったら、汚い言葉を叫ぼうと思っていた。だけどわたしはずっと上を向いたまま、浅草の濁った空を見ていた。足元を照らす花火より、隣にいる人の横顔を照らす花火のほうが、好きだと思った。

 メルト・エイジ。いつか消えて無くなる、若き日々。