答え合わせ

 先日、旧友に会った。彼は賢いので好きだ。

 アイスコーヒーを注文した伝票はもらえなかったし、古着屋では欲しい服が見つからなかった。おまけに井の頭恩賜公園のボートでビールは飲めないらしいが、我々はやや湿ったベンチにも座れるし、靴が汚れるのを気にしないで濡れた土の上も歩けるので、よかった。

 池には木々が映っていて、東山魁夷の絵のしょぼいバージョンみたいだった。貧相な絵画を見ながらベンチに座った。曇天の灰色と木の緑がやけに馴染んでいて、涼しかった。ここでなにを話したかはあまり覚えていない(映画や美術の話は喫茶店で済ませた。タバコ4本ぶんくらい話した。)が、彼は「同情を求めてるだけの人間の相談(そもそもそれは相談とは言わない)に乗るのは時間の無駄」みたいなことを言っていた気がする。わたしが「答え合わせしたいだけだよね」と同意したら、「それブログのタイトルにしたら」と言われた。

 帰りの電車で、『イヤホンのぷにぷに』が落ちているのを発見した。京王井の頭線急行渋谷行きで、沈黙と異彩という強烈な『矛盾』を放っていたそれをずっと見ていたら、すぐに終点に到着した。『イヤホンのぷにぷに』はあっけなく明大前だったかでオッさんにより蹴散らされた。『イヤホンのぷにぷに』の持ち主について考察したが、意見が割れた。わたしは、スマホゲーム好きの男だと思っている。今も『イヤホンのぷにぷに』が無くて困ってる人は誰なんだろう。スペアがあるから別に困っていないのだとしたら、それはそれでなんだか悲しい。

 予定よりも少し早く解散した。たぶんわたしはもう少し話したいことがあったかもしれないが、久しぶりに話ができて楽しかった。とりあえず、教えてもらった映画を観よう。同情でなく、共感による答え合わせは、認めてもいいとわたしは思っている。

 

 

せっかく「短歌いいよね」と盛り上がったので、あの日について一首詠もうと思っていたのだが、思いつかなかったので自由律俳句を一句。

 

素面でボートを漕ぐ恋に溺れた者の狂気