箱入り娘

 

 その乾いた赤ん坊は死体ではなかった。

 口元に寄せられた赤ん坊の手に、恐る恐る自分の人差し指を近づけてみると、赤ん坊は力無くそれを握った。

 生きているということにただならぬ安堵を感じた。

 まったく記憶のないこの子は、自分の腹から産まれたのだという。この子の誕生日を尋ねられても、わたしは答えることができなかった。今日は3月29日である。だいたい1週間ほど前に産まれたのだろうと予想はつくが、箱の中で1週間も声を上げず、何も飲まずに、赤ん坊が生き延びるなどあり得ないことだった。そういえば、名前も知らない。自分の子であるということ自体が信じ難い。しかし、周囲の反応から察するに、この赤ん坊は自分の子に間違いなかった。この子の父親について誰も尋ねてこないことは奇妙ではあったが唯一の救いだった。

 まずわたしは赤ん坊を風呂に入れた。

 

 

 目が覚めた。