親愛なる友人へ

 仲良くなったきっかけはなんだっただろう。たしか、わたしたちには共通の友人がいて、数回は向かい合ってお昼ごはんを食べたような気もするけれど、特にこれといった話もせず、友達の友達という関係、机と机の隙間が見事にそれを表していたように思う。

 

 

ほんとうに、思い出せない。

 

 

 ああ、ライブハウスだったっけ。あの日のお世辞にも上手とは言えない演奏に、感銘を受けたんだったね。周りは、くすくすといやな笑い声を立てていたけれど、わたしたちは、真剣に舞台の上を見ていた。もじもじしているギターの女の子の後ろで、ただ楽しそうにドラムを叩くあの子を、見ていた。わかりあえた気がしたのは、たぶんあの時だろう。

 バイト代で、安いベースを買った。向かい合ってお昼ごはんを食べただけのわたしたちと、離れたところでライブを見ていただけの、近いとも、遠いとも言えないようなわたしたちが、同じ舞台の上で歌い、演奏するまでに、そう時間はかからなかった。お世辞にも上手とは言えないわたしたちの演奏に、あの日のわたしたちのように感銘を受けた誰かがいるとは思えない。結局、ベースはあれからまったく弾いていない。情けない。ないばっかり。

 青いヘッドフォンをして歩く君(君、っていうのは恥ずかしいが、ここでは君と呼ぶ。)に、「何を聴いてるの?」と尋ねた。きのこ帝国だった。「えっ!わたしもCD持っているよ」「えーっ!」あれは、雪が降る前の、寒い寒い秋のしっぽあたりだった気がする。

 同じ雑誌(装苑)を読んでいることも、知った。同じ小説(森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』)が好きなことも。ハルカトミユキも、だよね。そうして、気がついたら、どんどん仲良くなった、んだっけ?

 きっかけとは、いったいなんなのだろう。振り返っても、きっかけという点が見つからない。だけど、そういう出会いこそ、わたしは大切にしたいと思う。それは、わたしたちの関係が、立派に、まっすぐ伸びる線である証拠だと思うので。

 美術室にあった、大きなキャンバスの絵、君が描いたものだとすぐにわかった。今は、どんな絵を描くのかな。変わらないでいてなんて、馬鹿なことはもう言わないよ。次は、もっと大人になって話がしたい。飴玉も、噛み砕かないで、ゆっくり食べる。

 

 たまに、こうして君のことを思い出します。わたしは、君と友達でいられることが、ほんとうに嬉しい。