KANIKAMA

 カニカマを食べなくなる日のことを考えた。"原材料の価格高騰とかで生産が困難になる日"ということではなくて、"スーパーには相変わらずカニカマが並んでいるのに、我が家から忽然と消える日"のことだ。

 祖母は、わたしの好物がカニカマだと思い込んでいるらしい。だから、スーパーに買い物に行くと、わたしのためにカニカマを買ってくるのだ。

 わたしはカニカマがそこまで好きではない。嫌いでもないけど、「あなたはたった今からカニカマを食べることができる権利を永遠に失いました」と突然カニカマの神様に言われても、冷静に、素直に、ただ「はい」と受け入れられるくらいのレベルだ。

 祖母がいつどのタイミングで、わたしがカニカマを好きだと勘違いしたのかはわからない。本物のカニは好きだ。正月にカニを貪り食うわたしを見て、こんなに喜んで食べるのなら普段も食べさせたいけれど、いくらなんでもそれは無理があるから、とカニカマを買ってきてくれるのだろうか。

 正直、祖母が買ってくるカニカマにはそろそろうんざりしている。祖母が「買ってきたよ」とわざわざ報告してくるたびに、「またか」と思う。母は、そんなわたしを見てバカにした笑い方をする。

 今日もわたしはカニカマを食べた。

 最近、向かい合って食事をする祖母が、よく咳き込むようになった。身体も弱ってきている。カニカマを買いに、ひとりで歩いてスーパーに行くこともなくなった。叔母に車で送り迎えを頼むようになった。

 たぶん、カニカマを食べなくなる日がそろそろ来るんだろう。カニカマの神様が「あなたはたった今からカニカマを食べることができる権利を失いました」と言う日ではなく。その日がきたら、うんざりした今日も、後悔の思い出になるのか。カニカマは、まだ半分冷蔵庫に残っている。