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静寂と喧騒と格闘

 絶え間なく嫉妬の水を与え皮肉なほど健やかに育った赤い実を齧る。甘い。この実が赤色に光っているように見えているのはどうやらわたしだけのようで、その他には真っ黒に見えているらしかった。周囲は腐らせた黒い実を喜んで頬張るわたしを気味悪がったが、自分以外は皆他人であるということを思うと、周りからの評価は本当にどうでもいいことだった。これはより楽に生きるための思考整理ではなくて、本能が興味を示さなかっただけであると言ってよい。

 自分が可愛いということは、この裏返しではないと思っている。気づかぬだけでお前は自意識に塗れていると陰で揶揄されていることは知っていた。しかし、憶測に過ぎないくせにやたらと威張っているようなそれを気にするような心の隙をやはりわたしは持ち合わせていなかった。こういう部分が俗に言う「世間一般」と適合できない原因だと知っていながら改めるつもりもなく、かと言ってまったく傷ついていないと言えば嘘になる、厄介な性質の生き物であることまでを自覚していた。この自意識の宇宙の果てを知り尽くしている、しかし実際はその気になっているだけなのである。そしてやはり、それも宇宙の果てより遥か手前にある事象であった。

 

…時間。一対五の休憩室より。