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ああ、気がついたらもうすぐ春だ。最近は眠りすぎなような気がして怠い。目が覚めないのだ。

髪の毛を黒く染めた。もともとは黒かったから昔に戻っただけなのに、違和感があって気持ちが悪い。茶色い髪にするくらいなら黒いほうがましだと思っていたし、そういうふうによく人は言うけれど、実際にやってみたらそんなことはなかった。根元から伸びてくる髪の毛は黒くて、それが本当の自分であるはずなのに、それから逃げるように生活している。

まったく怠惰だ。

最近は西洋絵画を好むようになり、絵の中にある光に心を奪われている。今までは日本の現代美術の中でも、特に前衛的なものが好きだったし、それしか見てこなかった。渋谷駅で誰かを待つふりをして岡本太郎の絵を眺めるのもよかった。ただ、理解の範疇を超えるものには振れなかった。頭を使いたくなかったのだと思う。今は、柔らかい光を見ただけで涙が出るくらいに弱っている。それとも、あの光は強烈な何かなのか。たぶん、後者だろう。

眩しくはないけど確かに明るいのは、夜明けの空だ。わたしが実際に歩いた秋だとそれは5時くらいだった。こんなふうに穏やかでいたいと思ったけど、帰り道でHOPEの空箱がぺちゃんこになって落ちていて、それが誰かの抜け殻だと思うと、焦燥感が夜と朝の境界線を濃く描いて、眩しい太陽の下をうつむきながら歩く羽目になった。

もしこの人生でひとつだけ思い通りにならないことがあるとするならば、いやこの話はやめておこう。

食後の皿を拭いていた。生きることが突然無意味に思えて、反対に自ら命を絶つことの意味のほうがはっきりと輪郭を持ってわたしの前に現れた。

どうでもいいことだらけの今までが、ああ、やっぱりどうでもよかったのだ。

眠る。