自意識過剰日誌

 喫茶店でレモンティーを注文した。出先では、気がつくと毎回レモンティーを飲んでいる。理由はコーヒーが飲めないからだけれど、本当は紅茶もあまり好きではない。

 それならば、ミルクセーキとか、クリームソーダとか、レモンスカッシュとか、とにかくコーヒーと紅茶以外ならばなんでもよいのだけれど、メニューの上のそんな文字は、不思議なことにわたしの目にはまったく入らないのだ。

 コーヒーが飲めるというだけで、わたしの中でその人の株が急上昇する。東証一部上場だ。紅茶なら、二部か。そう、とってもくだらないのだ。

 輪切りのレモンを紅茶に浮かべるとき、うまくバランスが取れなくて、まわりの人にバレないようにこっそり指を使ってスプーンに乗せた。自分のこういうところが嫌い。とてつもなくダサい。虚しさが高田馬場を走る山手線を追い越した。

 本来ならば美味しいはずの紅茶を下手くそに啜っているとき、紅茶の上のレモンと目が合った。黄色い声で笑われているような気持ちになって、店の隅の席でさらに小さくなってしまう。

 「ミルクセーキで」

「クリームソーダ」

「じゃあレモンスカッシュを一つ」

 わたしもそれが、飲みたかったな。

 他人の声で今さらメニューの上の文字が浮かび上がって、カップの中に残ったレモンとまた目が合う。嘲笑が聞こえる前に、スプーンでレモンをひと突きしてから店を出た。妙に勝ち誇った気分のあとで、虚しさが山手線を300周した。