ある人の手紙

拝啓

 

そういえば、金木犀の匂い、19年生きてきて初めて嗅ぎました。

よく考えてみたら、青森には秋がなかったような気がします。8月の頭、ねぶた祭りが終わってしまったら、夏の影は祭りを後にする人の足で跡形もなく踏み潰されて、秋を迎える前に来たる冬を憂いてしまっているような、そんな情景が浮かぶのです。

青森でもイチョウの木は眩しく輝き、紅葉は轟々と燃えるけれど、わたしは横浜へ来て、これほどまでに秋を良い季節だと感じたことはありませんでした。秋は主張の無い季節だと思っていましたが、わたしは秋を知らないだけのようでした。秋でいるうち、何度でも深呼吸しようと思いました。

 

そちらの冬はどうですか。雪は降らないようなので、羨ましい限りです。わたしが横浜にいたころ、一度だけ雪が降りました。交通機関は麻痺して、こんなことがニュースにまでなって、寮のテレビで見ていましたが、大笑いしました。

クリスマスや年末には、イルミネーションがとっても綺麗なようですね。これは、実家のテレビで見ました。

そういえば、

「イルミネーションや夜景は、どうせ人が作ったものであり、ただの光なのだから、まったく美しいとは思わない。」

なんて話している人がいましたが、どう思いますか?わたしは、人間が作ったものを全否定だなんて、笑ってしまいました。この件に関してぜひ、あなたの意見を聞きたいです。

 

次は、いつ会えるのでしょうか。神田でカレーライスを食べる約束、わたしは忘れていませんよ。

 

それでは、お体に気をつけて。

 

敬具