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風化していく我々は

 びっしりと芝生が生えた封筒が届いたのは、今から一ヶ月ほど前のことである。

 

 「変わることを簡単に良い悪いと言えないけど、ZOOちゃん(わたしのあだ名)の芯の部分は変わっていないのだろうな。」

 

 8枚にもわたる手紙の最後の1枚には、そう書かれていた。

 

 わたしは、半年ぶりに彼女にあったとき、「前の◯◯ちゃんが思い出せない」と言った。『変わった』という言葉に、良いとか悪いとかの判断基準があるとは思わなかった。ただ単純に、現在の彼女を目の前にしたとたん、わたしの中の◯◯ちゃんは、過去の人になってしまった。そのときは、油画みたいだと思った。あれから時間は経ったのだ。乾いた色と、上から塗り重ねた色は、過去と現在そのものである。見えない。見えない色は、なかなか思い出せない。目の前にある色が美しければ、なおさらのことだ、と。

 

 昔の自分にコンプレックスを感じている。

 それはきっと、わたしも彼女も、同じだと思っている。自分がたまらなく嫌いで、そんな自分を肯定するための手口も似ていたから、わたしたちは仲良くなれたと思っているんだけど、どうだろう?

 

 わたしが思い出せないのは、彼女が髪を束ねていた姿にすぎなかった。夏服の、白い開襟シャツを着ている姿にすぎなかった。そうだ、これを、言いたかったんだ。◯◯ちゃんの芯の部分は変わっていないと思うよ。こう伝えられたら、よかったな。

 

 わたしは、彼女のことが本当に好きだ。

 彼女も、わたしのことを好きだと言った。「恋愛とも、友情とも、尊敬とも、嫉妬とも、同志とも少し違う」と、彼女は言った。

 わたしには、恋愛も、友情も、尊敬も、嫉妬も、同志も、そのすべてに彼女が当てはまる。

 

  今日やっと、真っ白な封筒を投函した。わたしの住む町には、雪が降る。

 一ヶ月も悩んだけれど、結局いい言葉が見つからなかったので、先日このブログの記事にも引用した小説の一節を書いて、封をした。彼女は、共鳴してくれる一人だと信じている。

 

青々とした芝生のおかげで、彼女からの封筒の隅には、92円切手が貼ってある。