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ハイライト

 一人では何もできないことを知った。わたしの描いた絵が売れないことは目に見えている。目の前の本棚には、読みかけの本が詰まっている。床の上の本の山の一番上には、わたしを引きつける言葉が並んでいる。Instagramのタイムラインには、正方形に切り取られた日常が流れている。金魚は、狭い水槽の中をただ行ったり来たりすることしかできない。小学生のころに通った道を思い出す。余っている薬の数を思い出す。段ボール箱に埋もれている。くだらない後悔を並べてみる。二度と会うことはないだろうと思っていた友人からの手紙を読む。理想は常に一人歩きしている。もう死んだ人たちの残した言葉を支えに生きている。酷いニュースに同情する。会いたい人の顔と声を想像する。こんなことを書いていると具合が悪くなる。同じ時間が東京に流れている。過去は失われたと現在も嘆き続けている。夜な夜な部屋の外でパトカーが唸る。酒は美味い。吐き気がするほど走ったのに何かを失ったような気がしている。通り過ぎる人を背に大きな絵を描き続ける女がいる。桜並木は川沿いに伸びる。地下鉄のホームには匂いがある。すれ違った同じ歳の女の子は緑色の髪をしていた。友達を作る方法を忘れた。泣くことを禁止されると腹が立つ。駆け引きは断ち切られた。図書館に革靴の音が響いた。潰れたタバコの箱にはHOPEと書いてあった。電気を消さないと何もできない。すべての映画が面白いわけではない。わたしたちは常に何かを恐れている。改札を通ってしまった。他人の気持ちなどわたしにはわからない。玄関のドアを開けると紫陽花が枯れていた。曲がり角の自動販売機の飲み物の変化に気づいた。

 ただ、ありがとう。感謝している。